「リアル」回帰が後押し 映画館、回復に光明 市場は前年比2割増へ 21年度は2100億円見込み、3Dなど「体験型」ニーズ発掘で動画配信と差別化

帝国データバンクは、映画館市場について調査・分析を行った。
<調査結果(要旨)>

  1. コロナ禍の影響に一服感 映画館市場、過去最低の20年度から回復
  2. リアル映画への支出が回復へ チケット代平均も上昇、3Dなど「リアル」体験へのニーズ高まる
  3. 「トップガン マーヴェリック」「ゆるキャン△」など話題作多く ウィズコロナで市場の回復続く見通し

コロナ禍の影響に一服感 映画館市場、過去最低の20年度から回復

映画館市場の推移映画館市場の推移

コロナ禍で大きな打撃を受けた映画館に、回復の兆しがうかがえる。TOHOシネマズやイオンシネマなどを中心とした2021年度の国内映画館市場(事業者売上高ベース)は、前年比約20%増の2100億円となる見通しとなった。過去10年で初めて3000億円を超えた19年度からは6割ほどの水準にとどまるものの、前年比半減と大幅に市場が縮小した20年度(1783億円)を約400億円上回る予想で、コロナによる影響は一服感が出ている。

映画館では、コロナ禍の感染拡大対策として時短営業や休業を余儀なくされ、長期にわたり売り上げが立たない期間が続いた。営業の全面再開後も公開予定作品の延期や収容定員の大幅引き下げ、館内飲食の制限など、大型スクリーンによるスケールメリットが生かせない営業を強いられたことが減収につながった。

一方で、20年後半からは興行収入が400億円を突破した「鬼滅の刃 無限列車編」のメガヒットを皮切りに、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(21年3月公開)、「竜とそばかすの姫」(同7月)などアニメ映画のヒットを追い風に、ファミリー層や若年層を中心に映画館への「回帰」の動きがみられた。また、座席の間引き営業なども徐々に緩和・撤廃されたことも重なり、1スクリーン当たりの入場者数も前年の2.9万人から3.2万人と増加した。

リアル映画への支出が回復へ チケット代平均も上昇、3Dなど「リアル」体験へのニーズ高まる

「映画代」への支出動向「映画代」への支出動向

コロナ禍を機にNetflixやHulu、Amazonプライムビデオといった定額制の動画配信サービスが拡大した。総務省の調査では、DL型の支出額はコロナ禍で大幅に増加し、2021年度は6年前の4倍超に拡大。タブレットなどで視聴可能な手軽さと、コロナ禍で外出できないことによるエンターテイメント需要を獲得したことも、こうした動画配信サービスの利用が急拡大した要因となった。一方で、映画などの支払額は大きく低迷し、コロナ禍が直撃した20年度はコロナ前から約3割の水準へと急減、21年度も6割前後と、コロナ前の水準には届いていない。

こうしたなか、ミニシアターなど小規模運営業者は、「来場客は高齢層が多く、いまだコロナ前の3~4割しか戻っていない」との声が聞かれるように、依然として厳しい運営を強いられているが、大手シネコンなどは1回あたりの映画チケット代は反対に上昇を続け、21年度の料金(1410円)は過去最高となった。4DX(ユナイテッドシネマ)やIMAX(TOHOシネマズ)など、入場料が高額な体感型シートが人気を集めたことで、全体の料金水準を押し上げた。動画配信サービスの拡大で一度は「映画館離れ」が懸念されたものの、大画面による迫力や音響など「リアル」体験のニーズが回復し、来場機会の減少を付加価値による客単価の上昇で補う構造へと変化している。

「トップガン マーヴェリック」「ゆるキャン△」など話題作多く ウィズコロナで市場の回復続く見通し

大手各社は4DXやIMAXなど「体験型シネマ」で顧客獲得を図る(写真=TOHOシネマズ)大手各社は4DXやIMAXなど「体験型シネマ」で顧客獲得を図る(写真=TOHOシネマズ)

エンタメ業界のマーケティング調査を行うGEM Partnersが昨年7月に行った調査では、同じ値段・同時配信の場合、生活者が映画館と動画配信のどちらを選ぶか調査したところ、ほぼ全てのジャンルで「絶対に映画館で観たい」が上回る結果となった。動画配信サービス(VOD)の定着で、「在宅で十分」といった層が生まれた一方で、大画面や音響など、映画館で視聴する「メリット」を改めて訴求できている点は、共存を懸念されてきたVODに対する大きなアドバンテージとなる。

2022年度も、「トップガン マーヴェリック」の興行が好調なほか、「映画『ゆるキャン△』」など話題作の放映も開始され、相応の集客が期待されている。座席制限の緩和などウィズコロナで大手シネコンを中心に営業環境も徐々に良化の気配を見せており、22年度は市場の回復がさらに進むことが予想される。

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